晴空便り

造形詩家・末富晶の晴れた空へつながるブログ

カタログの外の世界へ<蘆花浅水荘~案内係見習い~>

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  今月27日に開催する蘆花浅水荘での現代文人生けの会の際、出来れば自分で屋敷内を案内したいという思いから、

「研修中」という札を首から下げている気持ちで、この間実際の見学に訪れた方のご案内に後ろからついて行き、色々と勉強をさせていただきました。

 

< 現代文人生けの会についてはこちら↓の記事へどうぞ

9月27日(水)” 現代文人生け ”を始めます - 晴空便り >

 

 

もちろんこれまでも案内について回ったことは何度かあり、そもそも初めて訪れた際には当然のごとく自分自身が見学者で、現当主の山元さんに各部屋ごとに丁寧にご説明いただいたのですが。

自分でもご案内できるように、、、と、背筋を伸ばした状態で聞くと、色々と今までに見えなかった発見があります。

 

それにしても改めて、本当にこの山元春挙氏の別邸・蘆花浅水荘は素晴らしい場所です。

 

重要文化財となっている建物で、古いものはとてもたくさんあるけれど、実は100年ほどの年月しか経っていないにもかかわらず登録されているものはそれほど多くないのです」

と、その日の案内の中でのお話にありましたが、それはつまりこの蘆花浅水荘はただ古くて大きいだけの建物ではない、ということになるでしょう。

 

部屋の一つ一つ、引手の一つ一つ、床も、柱も、ふすまも、天井も、なにもかも…

 

どこを見ても、何を指さしても、「あ、これはね…」と話につながる。

私にはまだまだとてもその全ての経緯を覚えることはできていませんが、一つ一つの姿の存在感から、そのものたちが未だに当時の何かをひきつれて今ここに「生きている」気配を感じるのです。

 

もちろん色々と特殊な環境に身を置いている人にしかできないことで、その頃としても、珍しいことだったのかもしれませんが、 

現代のこの国に、こんな風に家を建てることの出来る人が一体どれくらいいるのだろう。

 

思わず、そんな風に思いを馳せてしまいます。

 

どの部屋も、部屋からの景色としての庭も、障子の桟の組まれ方一つをとっても、

ここではすべて、春挙さんの作品なのだと言えます。

 

他のどこにもない、同じものは二つとないものばかり。

それだけに魂がこもり、言葉で言いようのない雰囲気をその場にとどめていると感じられるのです。

 

カタログの中から、好きなものを選んで。

自分の好きなものを組み合わせて作った環境を、どれだけ個性的に彩ったとしても。

こんな風に一人の人間の命から生み出された物の持つ魅力には、どうしたってかなわない。

それどころか、実は同じ土俵に上がることさえできないのではないかと思えます。

 

少し前まで、

「どれだけカタログの中から自由に自分の好きなものを選べるか」

「どれだけ多くの選択肢を持ち、選んだ品々で自分の人生を「豊か」に彩るか」が重要で、

 

「たくさん選べる人ほど、幸せになれる」

 

そんな考えが多数派をしめる時代だったような気がします。

 

そのために、より選べる「選択肢」を増やすことがいいことだという風潮があり、

選択肢を増やせる条件として、お金や肩書やその他いろいろなステータスが絶対的に必要とされていたのではないでしょうか。

 

 そこからいくと私の通ってきた道である不登校児など、だからとっても最悪で、

「人生の序盤からいきなり選択肢を0にする」

ような行動だと思われていたのだろうなと今なら納得できます。

 

確かに、その中では学校に行かなくなってしまえばその後の道は絶たれたように見えるのです。

 

でももしも、どんな学校に行きたいか、どんな会社に行きたいか、どんな人と結婚したいかと、そんな風に「選ぶ」だけが人生ではないのなら。

それだけが、世界ではないのなら。

 

私たちはその選択肢を、選ぶだけでなく、つくり出すこともできる。

 

 

山元春挙氏が命を灯し、十年がかりで「蘆花浅水荘」の全貌をつくり上げたように。

 

 

少しずつでも、人生の舵を「つくり出す」方向に変えていけたなら。

行き詰り混迷を深めると言われる現代社会の中で、ともすれば道しるべの灯りをそれぞれの胸にともすことができるのではないか。

 

 

そんな淡い希望を、抱きもするのです。

 

 

…さて、どうしてこうなったのか。

ずいぶん話がそれました。

 

ともかくこの素晴らしい建物を前に、

「昔はよかったね」

云々と他人事のように言っている場合でないことは確かです。

 

今に生きる私たちへのメッセージと受け取って、

ありがたくもご縁のあったこの場所で、文人生けの会をさせていただきます。

 

よい日になるよう、あれこれと。

準備をすすめていきますね。

 

 

    末富晶

 

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