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晴空便り

造形詩家・末富晶の晴れた空へつながるブログ

祖母とウグイス

晴空便り

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祖母は92歳になるので、最近ではまだ肌寒いこの時期に外に出ることはめったになくなったけれど。

少し前まで春先には庭に出て、花の世話をしたり近所の人と話をしたりしている姿をよく見かけていました。

 

あれは何年前のことなのでしょう。

家の用事をしていた私の耳に、祖母の楽しげな

「上手、上手ね」

という声が聞こえてきた時がありました。誰かとしゃべっているのかと思ったけれど、庭の中には他に人の影はなく、不思議に思ったのと同時に耳に届いたのは鶯の鳴き声。

「ほら上手、上手だわぁ」

と返している祖母の様子から、どうやら木の上の鶯に声をかけているのだと知りました。

 

まだ若いのかその鶯の鳴き声は不安定にさまよっていて、どうやら祖母は彼の歌の練習を励まし応援していたようなのです。

 

まさかそんなものを鳥は意に介さないだろうというのが、まあ多分普通の考えなのだろうとは思いますが。

私にはその時、声をかけられたり拍手をされたりしている鶯がいつまでも逃げずにそこにいる風景が、祖母の励ましはどういう形でか届いていて、あの鳥はそれに応えようとしているのではないか・・・という風に見えました。

 

日差しが柔らかくなり、鶯の声が聞こえるようになるとふと思い出す春の1コマです。

 

 

私も今、新しいことを始めるにあたり、さまざまな方からの励ましをいただいています。

 応援していただくと、やはり、力を得た気持ちになり。

鶯よろしく鳴こうではないかと思うのです。

 

黙って森の木陰に隠れているのが、どちらかと言えば今までの好みだったのですが。

「ここにいるよ」と鳴いてしまえば、至らぬところも丸見えで言い訳も出来ないわけなのですが。

 

今現在、どんな場所にいるのか。 

どんな風な人間なのか。

 

あの鶯を見習って、

周りにいてくださる方々に、なるべく隠さず、表していければいいなと。

そう思っているのです。

 

 

 

   末富晶

 

 

<晴空便り>

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